2005.08.21全日本実業団サイクルロードレースin小川

秋山尚徳


実業団のレースの中でもこの小川村でのレースは、登りと下りしかない極端なコースのレースだ。BR−1の選手と言えども、よほど登りに強い選手でないと完走するのも困難だ。

チームマサヒコミフネドットコムの中では秋山が最も期待できる。
彼は全日本選手権の前に栂池で行われた実業団ヒルクライムレースで、3位という成績を残した。
実業団レベルではまったく無名な彼の容赦ないペースアップに、野寺選手(シマノ)ですら一度は窮地に立たされ離れてしまったほど。欧州でプロとして走っていた野寺選手の意地が最後の最後で炸裂し逆転。だがその計算外のペースアップのため、2本目のタイムトライアルでは大失速、大きくライバル達にタイムを縮められ、危うく優勝を逃してしまうところだった。
「いやぁ〜ホント焦りましたよ。まったく付いていけなくて離れてしまい、後ろから来る村山さんに喰らい付いていきました。意地だけですよ」(野寺談)

秋山のポテンシャルが高いのは確か。しかし全日本選手権(アンダー23)後、秋山の体調に異変が生じた。
シーズン前半。一気に頂点を争うレベルまで登りつめたのだが、そこで体の限界、軽いオーバーワークに陥っていた。7月は実業団ランキングをジャンプさせるはずが、逆に後退してしまった。

あまりにも「簡単に」上位に食い込んでしまった栂池。そこから秋山の葛藤は始まった。
積極的な栂池のレースを境にその後は消極的なレースが続き、結果を出せない。結果を出せないがためにまじめに練習に取り組む。その結果オーバーワークでパフォーマンスは低下していく・・・メビウスの輪に迷い込んでしまった秋山がそこにいた。

序盤から私三船が、ミヤタスバルのこの日のエース柿沼のためにアタック開始。これが引き金となり集団は長く伸び、渓谷を行く大蛇のように進んでいく。昨年より急斜面まで確実にスピードが速かったはずだ。
1周目の登りを終えて先頭は10名強。ここに入っていないと「勝負」をするには厳しい。秋山は第2グループで頂上を通過する。

もう一人このレースに参加した笹井は「ジワジワ坂が本格化して来るが踏むも回転もピッチが上がらずズルズル後退」(笹井談)と、第2関門で既に先頭から2分ほど開いてしまったような状態。頂上でそのままリタイヤしてしまった。

2回目の登り。苦悩する秋山がペースを上げ始める。しかしそこはまだ緩斜面、集団の選手は苦もなく秋山をマークする。そして急斜面・・・
ここで前に追いつこうと登りに自信のある選手達がペースアップ、ここまでに体力を使ってしまった秋山は後退し始める。
2回目の頂上で先頭から3分半、3回目では6分差となる。
そして4回目の頂上で9分となり、下りきったところでタイムアウト(先頭から関門で10分差となった時点でリタイヤさせられる)

「次に頑張ります」
そう応えるのは簡単だ。今彼に一番大事なのは「なぜダメだったのか?」「何が見えていなかったのか?」自分を第三者的な立場に立って、冷静に分析することではないだろうか。
誰もが驚愕した栂池での走りと一体何が違うのか?あの相手が誰であろうと攻めようとする気持ちは健在だったのか?課題は大きく膨れ上がっている。
アンダー最後の年ながら本格的な自転車競技歴は2年目。まだまだ見えていない部分の方が多い。今年経験した屈辱的な結果は、きっと彼を今後大きくするための試練だと思っている。
「登りのレースでは自信もあり結果も出せたんです。でも他の普通のレースはまったくダメで・・・(中略)でも努力して克服することが出来たんです」そう言い切るのはミヤタスバルに加入して2年目の西村拓也選手。
普段は市役所に勤める公務員。練習時間はほとんどない。その中で栂池だけでなく神戸クリテでも優勝した経緯を持つ。

秋山はヒルクライマーとして西村を見習う点が多いはずだ。
これからの秋山のレースに対する姿勢に注目していきたいと思うし、応援してあげて欲しいと思う。

チームGM:三船雅彦